あたしは桜子- 売れないモデル-
桜子は、智也に早く知らせたかった。アパートへ帰るとすぐに智也の背中に抱き付いた。

「なんだよー、今大事なとこなんだよ。」


「だってねえ智也!すごーく仕事たくさん入ったの。嬉しくて!」


桜子は上機嫌だった。智也は不機嫌そうに言う。


「仕事たくさん入って良かったね。俺、今集中したいから後で聞く。」

桜子はカチンときた。智也なら一緒に喜んでくれると思ったのに。


「何よ、そんな風に言わなくてもいいじゃない。」


「俺だってさ、お前と一緒にいたいから頑張ってんのさ。今度の試験滑ったら俺、帰らなければならないんだから。」


智也は怒った。


「俺はお前の事を失いたくないんだ。」


「わかってる…あのね、仕事大変になるから、社長の家へしばらく行く事になったの。」

「え、俺聞いてないし。」


「あたしだってそうよ、急になの。でも、これから大変だし…売り出すんだからって。社長の家からなら車ですぐ仕事場行けるし。」


「しばらくってさ、どのくらい?」

「わからないわ。事務所の言うようにしないと…今が一番大事なとこなんだ。」


「ふーん。そっか…。」


智也はそう言うと、また机に向かった。


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