あたしは桜子- 売れないモデル-
桜子は、社長の家に泊まり込んだ。仕事場と家の往復で、忙しいが充実した毎日だった。
遊びに行く暇なんてないけど、全然OKだし…。

やがて、雑誌やCMに顔を出すようになると、あっという間に有名になった。

殆どの移動は車で行き、一人で出かける事は少なかった。智也とは、ケータイでやり取りしていたが、やがて忙しさに紛れて連絡が途絶えがちになった。


あっという間に一年がたった。


「桜子、そろそろ自分のマンションでも探すか。いつまでも居候みたいで落ち着かないしな。」


社長の言葉に、桜子は喜んだ。


「ほんと?あたし自分でマンション借りて住めるなんて…夢みたい。」

「この一年間頑張ったし、セキュリティのちゃんとしてる所探してみよう。」


桜子はその夜、眠れなかった。

桜子は、この一年間で誰もが知っている顔になった。自由にコンビニ通いとはいかなくなった。もちろん智也とも会えずに…。智也は今頃何しているだろう。
きっと、連絡のない事を怒っているだろう。ううん、もしかしたらもう新しい彼女がいるかもしれない。


< 43 / 89 >

この作品をシェア

pagetop