あたしは桜子- 売れないモデル-
桜子は、特にあてなどなかった。
モデルとしては、一応成功した。でももう、あの世界に未練はなかった。
桜子は、小さいマンションを借りた。

何か仕事を探そう。

今までの豪華なマンションとは違うが、それでも一人暮らしには充分な広さだった。

桜子のケータイが鳴る。


「桜子、母さんだけど…。」


「母さん、何か用なの。」


マネージャー、番号教えたわね…。

「桜子、こっちにもマスコミが押しかけて大変だったんだよ。でも、母さんは余計な事しゃべらなかったからね。」


「そう、迷惑かけたわね。あたし忙しいの。」


「あの、母さん今一人暮らしなんだよ。お金はあるからね、お前がよければ一緒に暮らしたいの。」


「あたしは大丈夫よ。困ってないし一人でやるから。」


桜子は電話を切ると、涙がこぼれた。
なんで、何の涙?何故こんな風になったの。

新しい街で生きるの。あたしはまだ若いんだし。


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