あたしは桜子- 売れないモデル-
桜子は、業界のつてで作詞の勉強を始めた。何もかもわからない状態だったが、とにかく何かしていないと不安だった。それに、他の仕事もなかなか見つかる筈もなかった。

行詰まると、サンドイッチを食べに店に行った。


「ここに来ると落ち着くわ。笑。」

「良かった。そんなに喜んで貰えたら、また頑張って作りますよ。」


やがて数ヶ月たち、桜子は居心地が良いと言って、小さいPCを持ち込んで作詞をするようになっていた。

「良い詩がかけましたか?」


コーヒーを持って来た店主が言う。

「いつもありがとう。なかなか難しいわ。」


「あの、桜子さんでしょ?モデルの。」


「ええ…。あの…。」


桜子は下を向いて返事に困った。


「あ…、すみません余計な事聞いて。僕、ファンだったんです。毎週あのドラマ楽しみでした。」


店主は、困った顔をして頭を下げた。


「いいのよ、あたしはもうモデルはしてないの。今、仕事はしてないの。」


「ほんとごめんなさい。」


店主はそう言って、カウンターの奥に引っ込むとキャベツを刻み始めた。


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