あたしは桜子- 売れないモデル-
今日も桜子は、フォレスト物語のドアを開ける。

風輝が、いらっしゃいと笑顔で迎えてくれる。
それだけで、日々元気になれる気がした。


「作詞の仕事はどう?はかどってる?」


風輝が聞いた。


「うん、少しずつ書いてるけど…。」


「ゆっくりやればいいよ。あ、でも余計な事かもしれないけどね、毎日のその…生活する…。」


「生活費でしょ?笑。大丈夫よ。今まで忙しくて、使い道はなかったもの。笑。」


「あは、それなら良かった。安心したよ。」


「あなたって変な人ね、そんな事まで心配してくれて。でもあたしここへ来て、あなたと話してるとね、やっぱり人は独りでは生きて行けないんだなって、思った。」


桜子の言葉に、風輝はサンドイッチを作る手を、止めた。


「桜子さんは、僕なんか想像もつかない世界で仕事してたでしょ。人に言えない大変な事、いっぱいあったと思うよ。」


「私ね、負けたくなかった。いつも気を張って突っ張ってさ。でも好きな仕事だったから、辛くなかった。それに、何でも仕事は大変なものだわ。」


桜子は、風輝を見ると微笑んだ。



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