ストーカー幼馴染は彼氏にはなりません!(多分)

「ご飯できてるから食べなね」


お母さんに声をかけられ、食卓につく。

久しぶりのお母さんのご飯。

美味しい〜!

「そういえば香奈。」

お母さんから声をかけられた。

「香奈の中学の制服、まだ残ってるんだけど処分してもいい?」

中学の制服か〜

なんだか捨てるのもったいない気もする

「思い出詰まってるから家に持って帰るよ」


…あれ、そういえば

「ずっと気になってたんだけど、お兄ちゃんは公立の小・中学で私はなんで私立なの?」

今考えたらあの頃も今も特別お金持ちという訳でもないし、私立に行かせるほど教育熱心という家庭でもないのに。


「それは、はるくんが居たからよ」

お母さんが一言。

え、どういうこと?

頭にハテナが浮かんでいた私にお母さんが詳しく説明してくれた。


晴人の家は両親ともに厳しく、祖父が私たちの学校の学園長だったこともあり、晴人を自分の学校に通わせようとしたらしい。

しかし晴人は私と一緒に公立に行くと言い張り、私立に行くなら学校には行かないとまで言い張ったらしい。

そこで困り果てた両親は私の両親に相談。

私を私立に行かせる代わりに学費や入学金等全て支払ってくれるということになったらしい。

しかし母はそれだと私が嫌な思いをするかもしれないと考え、多忙な晴人の両親に変わり私の家で晴人を両親の帰宅時間まで預かることを提案したんだそう。

要は、ベビーシッターの料金がそのまま学費や入学金にあてられた。という形になっていたらしい。


…知らなかった。


「習い事は晴人が一緒にやりたいからっていうのは知ってたけど、まさか学校までとは」


私が驚いていると


「習い事もはるくんの両親がはるくんに習わせたかっただけで、はるくんは嫌がっていたけど、はるくんからの譲歩で香奈と一緒だったら。って話になったみたいよ」


そのおかげでだいぶ家計が楽になって助かったわ

と笑うお母さん。


それで済ませていいのか…とも思うけれど

小さい頃のこととはいえ、知らないこともあるんだなぁと実感した。

「俺昔、晴人嫌いだったんだよな」

急に切り出す兄。

「え?なんで?」

2歳年上とはいえ、たまに一緒に遊ぶことだってあった…あれ、なかったか…?


私と兄が二人で遊ぶことはあっても

兄と晴人が二人で遊んでるところ見た事ないかも。

「あいつ、香奈が小さい頃から俺と2人で遊んでるとすっげえ睨んできててさ。
顔が整ってるやつの睨みってめちゃくちゃ怖いんだよ」

…それは、2歳年下の男の子にビビってたという話ですか、兄よ…。

というか小さい頃の晴人は可愛いって記憶しかないんだけど、私。


晴人が怖いって何の話?

「それに高校の時に俺が友達連れて遊びに来た時、友達が香奈を凄い可愛いって褒めて噂になってたんだけど」

たまに友達を連れて遊びに来てた記憶はある…。

けど、そんな噂が流れてたのか。

「香奈にアタックしようとした友達が晴人に牽制されたらしくて。その話聞いた時にこいつやばいなと思ったんだよな」


懐かしいな、と続ける兄。


「今になって思えばずっと好きな女が他の男にちょっかいかけられそうになって阻止しただけなんだろうけど、当時の俺はそんな気持ち理解出来なかったから怖い奴だと思ってた」


初めて聞く話ばかりで戸惑う私

ずっと好きだった相手、って話の流れからして私だと思うけど


「え、でも晴人、私と付き合ってた時に浮気したんだよ?」

好きな人と付き合ってるのに浮気するってどういう状況…?

「それさぁ、俺のせいかもしれないんだよなぁ」

…!?

「え、どういうこと?」

間髪入れずに問い詰める私。

「俺が、香奈にもっと見てほしいなら嫉妬でもさせてみれば?って言ったんだよ。まさか浮気までするとは思わなかったけど。」


……なんだって?


「俺的には当時晴人のことやばい奴だと思ってたから妹から離れてくれて安心したんだけど。香奈もすぐに立ち直ると思ってたし。」


「それってお兄ちゃんが唆(ソソノカ)したってことでしょ?」

少し喧嘩口調になる私。

「俺も浮気までするとは思わなかったんだよ、でも結果的に俺が香奈を傷つけたんだよな。ごめん」

そう言って頭を下げる兄。


…まぁたしかに、晴人のやり方も悪いし

唆した兄も悪い。

でも私があの時問い詰めなかったのも、悪い。


あの時自分の感情ごとぶつけて問い詰めていたら、こんなに時間が経たずに真実を知れたのかもしれない。


今さら後悔しても後の祭りだけれど。

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