ストーカー幼馴染は彼氏にはなりません!(多分)
寝室は軽い物置になっており、私が置いていった荷物がまとめられていた
「きたついでに荷物の断捨離しなさいね」
寝室につくなりリビングにいる母から司令が入った
生返事をしつつ荷物へ視線を向けた
「結構多いなぁ」
やる気スイッチが入らないまま、荷物の分別作業に入った。
置いてあった荷物は懐かしいものばかりで
分別しつつ、思い出に浸っていた。
「これ、幼稚園の時の陽菜との交換ノートだ」
「これはバスケの試合で初勝利した時の…」
中々捨てきれずにずっと取っておいたものばかり。
捨てる…のは嫌だから持ち帰るかなぁ。
なんて悩みながら分別を進めるとある1冊のノートが視界に入った。
「これ…」
私はノートを開いた。
「昔書いた詩だ…。」
そこには、今と違って恋ができていた時の言葉が綴られていた。
「これ、晴人と付き合う少し前から書き始めたんだよね」
当時の私は、晴人と再会して、彼に恋して、彼を想って、愛の言葉を綴っていた。
「この詩、久しぶりに二人で遊んだ時のだ…」
「この詩は付き合って初めてキスをした時…」
書いてある言葉はどれも稚拙で、不格好で…
でも愛情が溢れていた
「本当に大好きだったんだなぁ」
今の私には書けない言葉。
あの時、晴人別れた時に捨てた感情。
良くも悪くも、"大人"になってしまった。
私は、ノートを処分品に分別した。
が、頭の中でチラつく今回のテーマ。
『10代〜20代が共感する女性目線の恋愛ソング』
漫画や小説を読んで書くことも出来なくはないと思う。
けれどそれは"与えられた言葉"で"感じた言葉"では無い。
そんな詩を書いていいのだろうか。
しかも今回は大チャンス。
失敗するわけにはいかない。
感情の載ってない詩を作る訳にはいかない。
…正直、1度捨てた感情…。ノートを、持ち帰りたくはない。
あの時…晴人と別れた時のことは私の中で折り合いがついている。
はず。
けれど、これを持ち帰ってまた感情が戻ってくるのが怖い。
………。
「よし、持ち帰ろう。大丈夫。昔のことだし。」
私は自分に言い聞かせるようにそう言って、ノートをカバンにしまった。