ストーカー幼馴染は彼氏にはなりません!(多分)
次の日、私は両親に挨拶をして家を出た。
自宅につくなり、詩を書く為、改めて持ち帰ったノートを読み返した。
想像通り、読み返して感じた当時の感情。
それに呑まれそうになりながらも、
ノートに書いてある詩をリメイクした。
基本的にはいじらず、文体を変えて、繰り返す言葉などを書き足した
…やっぱり、詩にのってる感情がちがう。
小説や漫画を読んで書いたものと、
今リメイクした詩。
雰囲気というか、言葉の発する力というか。
今までで一番いい出来の詩が完成した。
私は急いで廉に送った。
まだ、多少の猶予はある。
けれど、この最高の詩を早く見て欲しくて。
廉からはすぐに電話がきた。
「すごくいい。最近の詩の中で一番いいよ!」
興奮した口調の廉。
「よかった。また何かあったら教えて」
…無事にリメイク出来て良かった。
詩を書いてて改めて感じた当時の愛情。
それは、私の記憶の中にあったものとは少し違っていた。
"大好きだった"と覚えていても、
"楽しかった・幸せだったこと"も覚えていなかった。
当時、"自分が感じた感情"や、"二人でいる時の空気感"も覚えていなかった。
…というか、忘れようと蓋をしていた。の方が正しいのかもしれない。
『一生懸命私と向き合ってくれた』こと、
『私の変化に必ず気づいて大袈裟なくらい褒めてくれた』こと、
『手を繋ぐ時緊張で少し強ばる綺麗な顔』や、
『初めてキス、お互い緊張で震えていた』こと、
『視線が合わさった時、温かい気持ちになれた』ことなど
不器用な晴人なりに大切にしてくれていた。
それを感じてもっと晴人を幸せにしたいと思ったこと。
そんな小さな好きや小さな幸せがたくさん綴られたノート。
今までの私は、晴人の浮気で全てが嘘だったのだと感じ、否定して、今まで感じた幸せが塗り潰されて、晴人との今までが全部悪いものになってしまっていた。
けれど、ノートを読んで当時の感情を思い出した。
この感情は危険だと一瞬は抑えようとしたが、
必死に抑えていた感情も
リメイクするためには同調するしかない。
当時の感情を受け入れるしかない。
そう、覚悟を決めた。
こうして作られた詩を廉に託した今、私に残っているのは当時のときめきや幸福な感情。
最初から蓋をせず、受け入れて、糧にしていれば今こんなにもこの感情に乱されたりはしなかったのかもしれない。
いや、昨日聞いた私の知らない晴人の話で私の中の当時の晴人が変わった。
あの話を聞いた後、改めて当時の感情に触れたからなのかもしれない。
…考えてもキリがない。
たとえ当時の感情が戻ってきたとしても
今、当時に戻れる訳でもない。
私は自分を落ち着かせるため、眠ることにした。