ストーカー幼馴染は彼氏にはなりません!(多分)
「晴人…?」
電話口から聞こえてきたのは弱々しい今にも泣きそうな小さな声だった。
『香奈ちゃん…』
小さな嗚咽混じりに絞り出すような声。
な、何があったの…?
「なにかあった?大丈夫?」
そう聞いても返事はない。
「今、どこにいるの?」
『…廉の病院に…。』
掠れるような声。
正直、今私は晴人に対してどう対応していいのかわからない。
ずっと一途に好きでいてくれて
付き合って、嫉妬させたいからと浮気をして
私を傷つけたと後悔して、引きこもって、
今は立ち直ってる…であろう、晴人。
私がこれ以上関わることで晴人も私もまた傷つくかもしれない。
多分晴人は昔から私に依存してた。
今になってやっとわかったことだけれど。
でも、わかったなら尚更、私がいることで晴人の視野を狭めるのかもしれない。
実際、私とずっと一緒にいた時の晴人はクラスメイトとも大して交流を持たず、私にべったりだった。
大人になったとはいえ、最低限の関わりにしておいた方がいいのかもしれない。
私の為にも晴人の為にも。
『…たい』
え、今…
「今、なんて言った?」
小さい声だけど、掠れてて上手く聞き取れなかったけれど…
これは聞き逃しちゃいけない言葉だと、
私の直感が叫んだ。
『香奈ちゃんに、会いたい』
今にも消えそうな声。
その言葉一つで私の頭の中でグルグル渦巻いていた悩みは吹き飛んだ。
…行かなきゃ。