ストーカー幼馴染は彼氏にはなりません!(多分)


私は病院中を探し回った。


けれど、みつからない。


大きい病院だけど、電話出来るところは限られている。


…晴人、いつも泣いてる時どこにいたっけ…。



頭の中で思い出される昔の晴人。


…そうだ。

晴人はいつも、狭くて人気のない場所で泣いてたんだ。


狭くて人気のない…


ちらっと視界に入った駐車場。


もしかして…。


私は止まっている車を片っ端から調べた。


端から端まで。


…いた。


「晴人!」


私が声をかけると目をまん丸にした晴人と目が合った。


「香奈ちゃん…」


驚いたからなのか、静かに泣き出した晴人


高校の時は泣かなくなったと思っていたけれど、まだまだ泣き虫だなぁ。


私はそんなことを考えながら車の中にいる晴人に近づいた。


「鍵、開けて?」


晴人にそう声をかけると車の鍵を開けてくれた。


「また泣いてるの?どうしたの?」

晴人の顔をのぞき込みながら聞くと


静かに顔を上げて私の目を見た晴人。


「香奈ちゃんにまた会えた…から」


かすれ声で、でも力強くそう言った。


「この前も会ったよ?」


私がそう答えると


「あの時は、焦って、勢いで家まで押しかけたから…。もう二度と、会えない、と思って…、」


嗚咽まじりだけれど、はっきりそう言った晴人。


そうか。


また会えて嬉しいって、

晴人はもう二度と会えないと思っていたからなのか。


でも、どうしてそう思ったんだろう。



「俺、香奈ちゃんに謝りたくて…。でも許されないのが怖くて…。」


晴人は続けた。


「あの後、4人で集まった時、香奈ちゃんの顔みて、目が真っ赤になってて、泣いたんだって気づいて、」


確かに、4人で集まって話し合うまで、ずっと泣いてた。



「俺、香奈ちゃんにもっと見て欲しくて、あんな嘘ついて、でもそれが、俺のわがままが、香奈ちゃんを傷つけて、もう会う資格ないと思って、」


…あんな嘘?


ってなんの話し?


「でもどうしても会いたくて、自立した強い人間になったら、また会いに行こうと思って」


…とりあえず、話を聞こう。


「ずっと香奈ちゃんに彼氏がいないの知って、安心したら、廉からあの詩が送られてきて、」



……。

彼氏がいないのも知ってたのか…。


「他の人に取られるかもって思ったら、いてもたってもいられなくなって、慌てて香奈ちゃんの家に行って、」


…あの時の質問はそういうことだったのか。


「俺、まだ強くなれてないのに行っちゃって、約束破っちゃって、また嫌われたかも、と思って、
でも香奈ちゃんは優しくて、昔の香奈ちゃんで、」


…約束?


「今日香奈ちゃん休みだから廉の病院来るかなと思って、遠くからでも見たいと思って、そしたら陽菜さんと会って、」



陽菜と?あ、さっき購買に行った時?



「香奈ちゃんに1度電話かけて香奈ちゃんが出たら話するのは許すって言われて」


ちょっと待って、陽菜????

なんで陽菜が許可を出す???


「でも香奈ちゃん前の番号着信拒否してるし、知らない番号にはでないから、ダメ元でかけて、」



そうだ。私着信拒否したわ。


そして当たり前のように番号を変えたのね、晴人。


「香奈ちゃんが乗るバス亭の前のこの駐車場なら1目見れるかなと思って、車動かして、そしたら香奈ちゃんからの電話があって、」



「香奈ちゃんからの電話、初めてで、嬉しくて、つい泣いちゃって、話せたら嬉しくて、会いたくなって…」



「会えたらもっと嬉しくて、俺もう泣かないって決めたのに…。」


必死に涙を抑えようとする晴人。



「色々聞きたいことあるんだけど、とりあえず落ち着こう。」


私がそう返すと静かに頷いて涙を拭った晴人。



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