ストーカー幼馴染は彼氏にはなりません!(多分)

「先に言っておきたいんだけど、私は高校の時のこと、怒ってないよ。今も昔も。」



私はできるだけ優しく、声を出した。

「だから嫌ってないし、嫌いになんてなれないよ。」


そう。嫌いになんてなれない。

確かに、あの時の私はショックを受けたし、悲しかった。

めちゃくちゃ泣いたし、晴人にとって私って失ってもいい人間なんだと感じて失望した。

でも、怒ってない。
嫌いにもなれない。

幼い頃からずっと一緒にいた晴人。

男の人として好きになる前から、家族みたいに思っていたし、一人の人間として好きだったし、可愛がってたし、尊敬してた。

だから、嫌いになれるわけが無い。

それだけ私にとって晴人という存在は大きい。

多分、この先一生嫌いになんてなれないんだと思う。


それに…

「それに、私があの時晴人に直接ぶつかっていれば、きっと違う未来になってたんだよ」



私はあの時、晴人の口から『お前はもういらない』って言われるのが怖くて

ただ、逃げた。

ぶつかるのを怖がり続けて、逃げ続けた。


…それはほんの数日前まで。ずっと。


着信拒否して、会わないようにして、できるだけ関わらないように…。


……そうか。ずっと怖かったんだ。

何があっても嫌いになれない相手に見放された気がして

それを本人の口から言われるのをひたすら逃げてたんだ。怖かったから。


また好きになって、捨てられるのも、

これ以上離れていくのも、怖かったんだ。


でも最近、色んな人から話を聞いて


私の見落としてた、知らなかった晴人を知って

もう逃げなくても大丈夫だと思ったんだ。



あの時もきっと今も、見捨てられてないって

やっとわかった。



「ずっと、逃げ回っててごめんね。」


私は晴人の手をそっと握り、頭を下げた。


私が逃げ回ったことで、晴人を傷つけた。


ここまで私の事で泣いてくれてる晴人を。


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