When pigs fly〜冷徹幼馴染からの愛情なんて有り得ないのに〜
 その肢体に恵那は思わず見惚れてしまった。再びキスをされ、うっとりと目を閉じる。

 泰生が恵那の中にゆっくりと身を沈めていくと、身も心も悦びに包まれ、恵那の瞳からは涙が一筋流れた。

 またこの日が来るなんて思わなかった……泰生と繋がっていることが、まるで夢のように感じた。

 そうよ……本当はずっとあなたが好きだった……。笑顔を見せてくれなくたって、さりげない優しさを感じられるだけで幸せだった。声をかけてもらえなくても、目が合うだけでときめいたの。

 だからあの日、私の初めてを泰生にあげられたことが嬉しかった。これで気持ちが繋がったって思った……。

 でも違った。泰生の気持ちが私のものになるなんて有り得ないことだとわかったの。

 恵那は苦しそうに顔を歪める泰生の顔を引き寄せ、キスを繰り返す。彼の汗が流れ落ちるたび、恵那の涙と絡まって零れ落ちる。

 なんなのよ……諦めたはずなのに、どうして私の心を掻き乱すの?

 もっと欲しい……もっとあなたでいっぱいにして欲しい……。あなたがいればそれでいいーー悲しくて切なくて苦しいのに、恵那の心はとてつもない幸せを感じた。
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