When pigs fly〜冷徹幼馴染からの愛情なんて有り得ないのに〜
* * * *

 病院に戻った泰生は恵那をベッドに寝かせ、顔や膝の擦り傷を治療する。その間に持ち物から身分証を見つけ、警察官に確認してもらう。

「じゃあ何かありましたら連絡させていただきますので」
「わかりました。彼女が目を覚ましたら伝えます」

 警察官が去ってから、泰生は恵那の身分証に記載された住所を見る。今はこの住所に住んでいるのか……どうりで実家に帰った時も会わないはずだ。

 いや、それも違うかな……あの日以降、俺は自分の意思で恵那を避けてきたから。

 ベッドの横に腰掛け、恵那の髪を撫でる。寝顔は幼い頃と変わらない。

 ふざけんなよ……不倫って一体なんなんだ? 恵那はそんなことをしていたのか? それとも何か理由があるのだろうか。

 そんなことは信じたくない……そう思うのに、五年前のことを思い出して胸が苦しくなる。全てが間違いだと言って欲しかった。
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