When pigs fly〜冷徹幼馴染からの愛情なんて有り得ないのに〜
* * * *

 二人が初めて出会ったのは幼稚の時。小さい頃からどこか冷めたところはあったが、家が近いということもあってよく一緒に遊んだ。冷たいだけでなく、所々で喜怒哀楽が垣間見えた。

 変わり始めたのは小学校の高学年あたりからだろうか。泰生はクラスの委員に抜擢されることも多く、徐々に距離が出来た。それまではお互いの親同士が仲良しだったためよく家の行き来をしていたのに、恵那が遊びに行っても部屋から出てこなくなってしまったのだ。

 中学と高校はお互いに女子校と男子校に進んだこともあり、ほとんど関わりはなかったが、家が正面なので会えば挨拶くらいは交わしていた。

「相変わらずなんだな」

あの頃と変わらない冷徹振りに、恵那は唇を噛んだ。

「な、何のことよ⁈」
「どうせまた笑顔を振りまいて、誘われれば誰にでもついていくんだろう?」
「はぁっ? 何それ、意味がわからない……」

 そこまで言ってから、恵那の頭に昨日のことが思い出される。ハッとしてから、ベッド脇のサイドテーブルに置かれていた自分のカバンに気付き、慌てて中から鏡を取り出す。

「信じられない……」

両頬が軽く腫れている。そして乱れた髪に悲しくなった。こんな顔と髪型で泰生の前にいるなんて……そこで恵那はハッとする。

ちょっと待って。なんで私はここにいるんだろうーー恵那は恐る恐る顔を上げる。未だに無表情のまま、泰生は恵那を見下ろしていた。
< 7 / 34 >

この作品をシェア

pagetop