When pigs fly〜冷徹幼馴染からの愛情なんて有り得ないのに〜
 恵那は泰生をキッと睨みつける。本音を言えば、昨夜のことを聞くは嫌だった。

 嫌いよ……泰生なんて……《《あの夜》》以来会わなかったのは、ずっとこいつを避けてきたからに他ならないーーでもこのままでは埒があかないのも事実だった。

「じゃあ聞き直すわ。私はどうしてここにいるの?」

 泰生は恵那が座りこんだままのベッドの隣に腰を下ろすと、彼女の顔を覗き込む。だけど視線は鋭く光っていた。

「覚えているだろう? お前が不倫相手の妻に平手打ちをされたこと。その後にスマホで頭部を叩かれそうになった途端に気を失ったんだ」
「そこまでは……なんとなく覚えてる……。でも、今のこの状況がわからないから聞いてるのよ」

 その目つきに耐えられず恵那は顔を背けるが、顎を掴まれ、泰生の方に向き直される。

「じゃあ教えてやる。よく聞けよ。お前が倒れた場所が、うちの病院のすぐそばだったんだ。診療を終えて帰ろうとした時に、通行人に呼ばれて行ってみたらお前が地面に転がった状態だったわけ。俺もまさかお前だとは思わなかったよ。それからうちの病院に運んで、特に異常もないからうちに連れてきた」
「そ、それはどうも……」

 泰生の手を振り払い、恵那は部屋の中を見渡した。高い天井、黒が基調となったモノトーンの部屋。キングサイズのベッドが悠々と置かれていることから、部屋の広さが実感出来る。

 ただ、大きな窓から見える景色に違和感を覚えた。泰生が大学入学と共に家を出たのは知っていたが、こんなに緑が生い茂っている場所が家の近くにあったかはなぞだった。
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