When pigs fly〜冷徹幼馴染からの愛情なんて有り得ないのに〜
 恵那の考えていることが伝わったのか、泰生も窓を見た。

「ここ……泰生の家なのよね……?」
「家って言い方は正確ではないかな。我が家の別荘っていうのが正しい言い方だろう」
「別荘……?」

 そういえば、小さい頃からよく休みの日を別荘で過ごしていると言っていた。でもかなり山の中にあると聞いていたようなーー恵那の顔色が急に青ざめる。

「今ここには俺たち二人だけだ。そして今日から二日間、外に出る予定はない」
「ちょ、ちょっと待ってよ……意味がわからない……。なんであんたと二人で過ごさなきゃいけないの⁈」

 その瞬間、恵那の体はベッドに押し倒される。戸惑う恵那に対し、泰生は真っ直ぐ彼女を見つめていた。

 両手を押さえつけられ、身動きが取れない。怖いというよりは緊張した。だってあの日のことを思い出してしまうーーそれは恵那にとって悲しい記憶。あの瞬間の悲しみは今でも忘れたことはなかったから。
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