弁護士は逃げる婚約者を離したくない
苦くて冷たい液体が喉を通ったのを確認すると、
「よし、決めた!」

宣言すると空っぽになったグラスを置いた。

「婚約破棄をしよう!」

私が考えたのは婚約破棄をしてもらうことだった。

だけど、自分から言ったら両親から説得の嵐になることは間違いないだろう。

考え直せとか思い止まれとかそんなことを言われるはずだ。

じゃあ、どうするか?

南川宇大に口裏をあわせてもらうことである。

口裏をお願いしなくても心配はないと思うが、念のためである。

お互いの両親には2人で何度か話しあいをした結果、婚約破棄をすることになったと言えば何も言わないだろう。

当の祖母たちはもういないから、決定権は私と南川宇大にあるはずだ。

「そうと決まったら、まずは話をしよう!」

首を縦に振って大きくうなずくと、残りのエビマヨを口に入れた。
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