弁護士は逃げる婚約者を離したくない
「南川さん、隠さなくていいですよ。

つきあっている人がいるならいるで、それでいいですから」

「いや、つきあっとる人なんて…」

「亡くなったおばあ様のためを思って、おばあ様に気を遣って、この話を受けたんですよね?」

彼の青灰色の瞳には私が映っている。

「大丈夫ですよ」

そう宣言して拳でドンと胸をたたいた。

「…はい?」

「婚約破棄は2人で話しあって決めたと、そう言いましょう。

2人で何度か話しあった末に婚約破棄することになったと言えば、周りも納得してくれますよ。

この話を決めた当人たちはもういないですし、決定権は私たちにあるようなものじゃないですか」

ワハハと、私は声を出して笑った。

「そう言う訳なので婚約破棄をしましょうよ!」

よし、我ながら決まったぞ!
< 13 / 82 >

この作品をシェア

pagetop