弁護士は逃げる婚約者を離したくない
「友達とは一緒になんべんかきたことはあるけど、女の子を連れてここへきたのは恵麻ちゃんが初めてだって言うことやで」

聞き返した私に宇大は答えた。

「えっ…ああ、そうなんですか…」

それに対して、私はそう返事をすることしかできなかった。

私が初めてって…これはうぬぼれてもいいヤツなのか?

いや、待て。

つきあっている女がいるくせに婚約をしているような男だぜ?

そんなヤツの言うことを真に受けたらダメだ、うん。

「ほな、行こか」

「あ、はい…」

とりあえず、水族館を出たらすぐにでも婚約破棄の話を持ちかけよう。

この間は何を言われたのかわからなくて戸惑って、婚約破棄はしないとか何とか言ったに違いない。

宇大に手を引かれるまま、私は水族館の中へと足を踏み入れた。
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