弁護士は逃げる婚約者を離したくない
「その人とつきあっていますよね?

だから、婚約破棄をしたいと言っているんです。

両親にはお互いに話しあって決めたと言えばいいですし、私のことを気にしているのでしたら…」

「ちょい待て、勝手に話を進めんといて」

宇大がストップと言うように手を私の前に出してきた。

「僕、蜜柑ちゃんとつきおうてなんかいーひんで」

宇大が言ったので、
「はっ?」

訳がわからなくて、私は聞き返した。

「つきあっていないって…?」

「蜜柑ちゃんとは小学生の時からの幼なじみで、彼女の会社で弁護士として雇われてるだけやさかい」

宇大の職業は弁護士は弁護士でも、顧問弁護士だと言っていたことを思い出した。

「蜜柑ちゃんとは友達や、それ以上もそれ以下もあらへん」

はっきりと、それもきっぱりと宇大は言った。
< 32 / 82 >

この作品をシェア

pagetop