弁護士は逃げる婚約者を離したくない
「詳しいことはまた後で決めよう」

宇大はそう言ってスーツのポケットから名刺入れとボールペンを取り出した。

「SNSのアカウントはまだ教えてへんかったやんな?」

そう言って宇大は名刺を1枚取り出すと、その裏にボールペンで何かをサラサラと書いた。

「はい」

書き終えると、私に名刺を渡してきた。

「それ、僕のアカウントやさかい」

名刺の裏に書いてあったのは宇大のSNSのアカウント名だった。

「家に帰ったらでええさかい、ちゃんと登録してや」

「お、おう…」

私は宇大の手から名刺を受け取った。

めちゃくちゃしてくれるじゃないか…と、私はそんなことしか思えなかった。

「ほな」

宇大はそう言うと、アイスコーヒーを飲み干した。
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