弁護士は逃げる婚約者を離したくない
ガチャッとドアが開いたかと思ったら、マスクにパジャマのうえから厚めのカーディガンを羽織っている宇大が顔を出した。

「おお、恵麻ちゃん…」

私の名前を言ったとたんに、宇大はゴホゴホと咳き込んだ。

「む、無理しないでくださいな…」

この状況でわざわざ出迎えにきてくれたのかと思いながら、私は言った。

「これ…」

私はエコバックを宇大の前に差し出した。

「エコバックは治った時に返してくればいいので」

「なあ」

「はい?」

どうした?

「ちょい、そばにおってくれへんか?」

宇大が言った。

「はい?」

何を言っているんだ、この人は。

1人で心細かったと言うのはよくわかるし、病人が何かをするとは思えないし…って、私も私で何を言っているんだ。
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