弁護士は逃げる婚約者を離したくない
うどんを食べ終えてベッドのうえで横になると、洗い物をしている音がキッチンから聞こえた。

食後だからなのか眠気がやってきて…私は誘われるように、ゆっくりと目を閉じたのだった。

「ーーッ…」

尿意を感じたので目を開けると、よく知っている天井が視界に入った。

トイレに行ってくるかと思いながら躰を起こしたら、
「何や、どないしたん?」

文庫本を手にしている宇大がそこにいた。

「…帰ったんじゃないんですか?」

私が聞いたら、
「病人を置いて帰れる訳があらへんやろう」
と、宇大は答えた。

私は息を吐くと、ベッドから抜け出した。

「どないしたん?」

そう聞いてきた宇大に、
「…トイレに行ってくるだけです」

私は返事をすると、トイレへと足を向かわせた。
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