弁護士は逃げる婚約者を離したくない
「弁護士さんですか…」

なかなかのハイスペックな職業に、私は何も言うことができなかった。

「まあ、弁護士と言うても顧問弁護士どす。

建設会社『マンダリンハウジング』に雇われとる弁護士どす」

宇大は続けて質問に答えた。

「えっ、近い…」

「んっ?」

「いえ、何も…」

聞き返してきた彼に私は首を横に振って答えた。

彼が雇われているその建設会社は私が働いているカフェの裏側にあった。

世間って狭いんだな。

そんなことを思っていたら、
「恵麻ちゃん」

宇大に名前を呼ばれた。

私と目があった彼は優しく微笑むと、
「こんな出会い方で戸惑っとるかも知れへんけど、ちょびっとずつでもええので僕のことを知ってください」
と、言った。
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