寝取られたくて、彼氏を匂わせてみました
「……んっ」

 唇の隙間から流れ込んでくる苦味。

 入りきらずにぽたぽたとこぼれ落ちる雫。

 それらがスローモーションに感じたあと、私は初めて海成とキスをしていることに気づいた。

「千春は、俺の方が好きだろ」

 あまりに突然の一言に驚きすぎて、なんと返したらいいのかわからない。
 ここで好きだというべきか、寝取り好きに対しては好きじゃないという方が正解なのか。

 私の返事も待たずに、背中に回った海成の腕が、ニットのすそを捲り上げる。
 その下のキャミソールにも手をかけて、素肌の背中を彼の手がなでる。
 彼の手は私より少し温度が高いようだ。そんな初めての感覚に私の心臓は飛び上がりそうだ。


 このまま、彼氏(仮想)から寝取って欲しい。


 海成が勢いよくニットとキャミをまとめてたくし上げると私の胸は簡単にぷるんと室温に触れた。

「触っていい?」

 何も言わずにうつむいたままの私を了承と受け取ったのか、海成の温かい手が私の胸を包んでいく。

「ソイツとは、もうこういうことした?」

 あぁ、そんなことすら想定してなかった。
 ええーっとどうしよう。

「ちょ、ちょっとだけ」

「ふーん。どんな風にされたのが気持ちよかった?」

「……んっ」

 揶揄うように親指で胸の頂を弾かれ、体がビクリと跳ねる。
 近づいた唇に今度は耳を優しく咥えられて、猛烈に耳が熱い。
 これ以上やったら、海成が火傷しそうだからやめて欲しい。

「千春、真っ赤。可愛い」
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