紳士な副社長からの求愛〜初心な彼女が花開く時〜【6/13番外編追加】
「あ、そうだ灯ちゃん。僕来週から1週間出張が入っちゃって、しばらく会えないんだ」
比呂さんが他のお客様のお相手をしに行ったタイミングで和泉さんが口を開く。
「出張ですか、それは大変ですね。どこに行かれるんですか?」
「うん、香港にね」
「香港!すごいですね⁉︎私行ったことないです!」
香港どころか、海外なんて一度も行ったことがない私はつい興奮して声を上げてしまった。
和泉さんは遊びに行く訳じゃないのに。
「そっか。じゃあお土産たくさん買ってくるから楽しみに待ってて」
内心反省していると、ふわりと笑った和泉さんが私の頭をくしゃりと撫でた。
「…ありがとうございます」
「1週間会えないのは寂しいけど、灯ちゃんをお土産で喜ばせるっていう目的が出来たから頑張れそう」
「お土産は、二の次でいいですからね?」
「うーん、僕にとっては正直最優先事項なんだけどなぁ」
和泉さんが顎に手を当てて真剣な顔でそう呟くから、私はぷっと吹き出してしまう。
「何言ってるんですか!お仕事、ちゃんと頑張って来て下さい」
「ん、頑張ります。向こうから、連絡するね」
私の言葉に破顔した和泉さんは、そうして次の週、香港へと旅立って行ったのだった。