紳士な副社長からの求愛〜初心な彼女が花開く時〜【6/13番外編追加】
「〜〜〜………っ!」
……ごつん!
耐え切れず、私はそのまま頭から壁に突っ込む。
「……おい、マッチ何やってんの」
「……お構いなく……っ」
お構いなくっていうか、私が今比呂さんに構っている余裕がない。
"大好きだよ"
まるで直接耳元で囁かれたみたいに耳に残る余韻。
和泉さんから、いつも伝えてもらっているその言葉。
それが今日はいつもよりも破壊力抜群で、……何でだろう、いつも以上に、響いた。
……ゆでだこ再び。
ダメだ、今顔を上げたらまた比呂さんを絶句させてしまう。
しばらくこのままこの顔を冷まそう……。
「……なぁマッチ。恭加さんのこと、恋愛としての好きか分からないって言ってたけどさぁ、それって……」
壁におでこをくっつけたまま微動だにしない私に、比呂さんが何かを言い掛けたその時。
「いらっしゃいませー」
カラン、とドアベルが鳴り、カウンターで女性客のお相手をしていた光太郎くんの声がいち早く響いた。
「……彩也子(サヤコ)さん」
そしてその直後聞こえて来た比呂さんの声に、珍しく驚きと戸惑いが滲んでいるような気がして。
不思議に思い、思わず顔を上げてその視線を辿って行けば、そこにはショートカットにくりくりの瞳が印象的な、スラっとした長身の美人さんがいた。