紳士な副社長からの求愛〜初心な彼女が花開く時〜【6/13番外編追加】
「あっ、やっほー、比呂くん、久しぶりー!」
彩也子さんと呼ばれた女性は、比呂さんの姿を認めると向日葵みたいな明るい笑顔を咲かせてカウンターの方へ向かって来る。私は慌てて姿勢を元へ戻した。
そして彼女はカウンターの、私から1つ席を空けた所にそのまま腰を下ろす。
「……ご無沙汰してます。いつこっち戻って来たんすか?」
「うん、日曜日にね!わー、何年ぶり?私があっちに発つ前が最後だったから……、もう3年ぶりくらい⁉︎」
「……ですね。彩也子さん、何にします?」
「久々に比呂くんのジントニックが飲みたい!」
「了解です」
注文を受けてカクテルを作り始める比呂さんを眺めながら、親しげな空気を醸し出す2人の邪魔にならないように私はそっと気配を消す。
「ーー恭加は元気にしてる?相変わらずここへも来てるの?」
「ゲホッ……!」
だけど彼女の鈴を転がすような可愛らしい声から紡がれたその名前に、私は今しがた口に含んだチャイナブルーを再び吹き出してしまいそうになった。
「……元気ですよ。相変わらずご贔屓にしてもらってます」
そんな私を横目に、比呂さんは淡々と答えているけれど。
恭加って、和泉さんのこと、だよね……?
親しげに和泉さんのことを呼び捨てにするこの女性は、一体何者……?
何か、胸がざわざわする。