紳士な副社長からの求愛〜初心な彼女が花開く時〜【6/13番外編追加】
「へぇ……。私と付き合ってる時だって、いつも一定の距離を保って一切踏み込んでなんて来てくれなかった、あの恭加がねぇ」
隣で彩也子さんが苦笑を漏らしている。
"付き合ってる時"
この一言で確定した、彩也子さんの正体。
ーーー彼女は和泉さんの元カノ、だ。
胸が、ざわざわしてもやもやする。
「あの時はその温度差に不安になっちゃって、仕事で日本を離れるのをきっかけに私からお別れした訳だけど。恭加もちゃんと恋愛に本気になれる奴だったってことか。……だったら私も、もう一度頑張ってみようかな」
「え?」
(えっ⁉︎)
比呂さんが驚きの声を上げたのと、私が思わず横を向いてしまったのはほぼ同時だった。
「その彼女がまだ恭加に落ちていないのなら、頑張っちゃおうかな」
「……彩也子さん」
呆気に取られていた私は、もう一度繰り返されたその宣言に弾かれるように顔を前に戻した。
そして誤魔化すようにグイッとチャイナブルーを飲み干す。
「ふふ。私ね、今回仕事で2ヶ月はこっちに滞在するの。………ねぇ、そこの彼女ー!」
空になったグラスを見つめながら胸の中のざわざわ、もやもやを持て余していれば、突然横から明るく声を掛けられた。