紳士な副社長からの求愛〜初心な彼女が花開く時〜【6/13番外編追加】
「……えっと……、私、ですか……?」
私が座っているいつもの席は、カウンターの1番左端。
よって、今左を向いて彩也子さんがにこにこと話しかけて来た相手は、どう考えても私しかいないのだけれど、つい聞いてしまった。
「そう、あなた!良かったら、1杯だけ付き合ってもらえない?」
「えっ⁉︎」
屈託なく笑う彩也子さんを前に、目が点になる。
……ちょっと待って⁉︎この人もう酔ってる……⁉︎
︎いや、まだちょっとしか飲んでないよね⁉︎それかどこかですでに1杯引っ掛けて来てるとか⁉︎
突然の展開に、もはや戸惑いを隠せない。
「彩也子さん、何ナンパしてるんすか」
それを察してか、比呂さんがフォローしてくれるけれど。
「……ダメ?1杯だけ!ね?」
両手を合わせて可愛くお願いされてしまえば、無下に断ることも出来なかった。
「……あー、じゃあ……、1杯だけ……」
「やったぁ!」
くしゃっと笑った彩也子さんはジントニックを片手に、1つ空けていた私の隣の席にスルっと移動して来る。
ふわっと、甘すぎないフローラル系の良い香りが鼻先を掠めた。
「……マッチは、次何飲む?」
何とも言えない表情で、さっき一気に飲み干して空になったグラスを下げてくれながら比呂さんが問う。