紳士な副社長からの求愛〜初心な彼女が花開く時〜【6/13番外編追加】
「あ……、じゃあ同じので……」
「了解」
「マッチ?」
彩也子さんが、不思議そうに小首を傾げた。
「あ、比呂さんがつけたあだ名で、深町だからマッチ、だそうです」
「そりゃあまた微妙なところからもじられたわねぇ」
「そうなんです。却下しても却下されて、結局私が譲歩した形に……」
「ははっ、比呂くん頑固だからなぁ」
苦笑いしながらそう説明すれば、肩を揺らしてくすくす笑う彩也子さん。
その可愛らしい笑顔と、あの時の和泉さんと全く同じことを言う彩也子さんに、また胸がざわめいた。
私が和泉さんと知り合いだということも、もちろん口説かれている本人だということも伏せたまま、簡単な自己紹介だけして一緒に飲み始める。
最初は戸惑っていた私も、気づけばすっかり人懐っこい彩也子さんのペースに巻き込まれ。
時々比呂さんも交えながら話せば話すほどに、私はいつの間にか彼女の不思議な魅力に引き込まれていた。
彼女と話すのは、とても楽しかった。
そして約束の1杯を飲み終えた彩也子さんは、
「灯ちゃん、今日は付き合ってくれてありがと!とっても楽しい時間だった!こっちにいる間に、また会えたらいいな」
そう言って眩いばかりの笑顔を浮かべ、さり気なく私の分の支払いまで済ませて颯爽と帰って行ったのだった。