紳士な副社長からの求愛〜初心な彼女が花開く時〜【6/13番外編追加】


ーーとても、魅力的な女性(ひと)だった。


化学繊維メーカーで研究職をしているという36歳(もっと若く見えていたから年齢を聞いてびっくりした)の彼女は、3年前からニューヨーク支社に勤務していて、今回は2ヶ月間の長期出張でこちらに戻って来ているらしい。


"これ、比呂くんにお土産、だったんだけど、ちょっと開けちゃうねー"

"……彩也子さん、渡す前に開けるとか、おかしくないっすか。しかも店で"

"あはは!だってせっかくなら灯ちゃんにもお裾分けしたいじゃない?"


あっけらかんとそう笑って私にお土産のお菓子をお裾分けしてくれた彩也子さんは、キレイで優しくて、気さくで明るくて。

初対面なのにちょっと強引で、だけど屈託なく笑うところが和泉さんとよく似ていると思う。

それ故私もすんなり馴染めてしまったのかもしれない。

だから2人が並んでいる姿を想像したら、とてもお似合いで。


"もう一度、頑張っちゃおうかな"


それと同時に彩也子さんのあの言葉を思い出してしまえば、簡単に胸がチクリと痛んだ。


「……マッチ」

「……なっ、何ですか、比呂さん」


そのタイミングで不意に呼ばれて、若干挙動が不審になってしまった。

「今の。彩也子さんって人。恭加さんの元カノ」

「……っ、いっ、言われなくても、ちゃんと察しましたけどっ?」


比呂さんが真顔で告げて来るけれど、そんなの、改めて教えてくれなくても分かってますから……!



何、この(えぐ)られる感覚。
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