紳士な副社長からの求愛〜初心な彼女が花開く時〜【6/13番外編追加】
今日珠理ちゃんや佐原くん、おばちゃんや比呂さんに私の元気がないように見えたのは、きっと和泉さんが原因。
これまではしょっちゅう会えていたのに、会えなくなって私が無意識に寂しく感じてしまっていたから。
和泉さんとの電話が終わるのが名残惜しく感じてしまったのも、元カノの彩也子さんにざわざわ、もやもやしてしまったのも、私が和泉さんのことを、ちゃんと恋愛的な意味で好きになっていたから。
あの日、あの時、初めてだったのに和泉さんのキスが嫌じゃなかったのも、そういうことーーー………。
思い返せば比呂さんに指摘されたその事実が、すとん、と私の胸に落ちて来た。
「……その顔は肯定と取って、いいんだよな?」
他のお客様の注文をこなしつつ、こちらを見て困ったように笑った比呂さんが聞く。
"その顔、比呂くんから隠してーー"
さっきの和泉さんの言葉を思い出して、私は慌ててメガネの上から両手で顔を覆い、比呂さんから真っ赤な顔を隠しながらもこくりと頷く。
「……恭加さん、出張から帰って来てマッチの気持ち聞いたら、喜ぶな」
「…………。」
比呂さんのその言葉を聞いた瞬間、一抹の不安が私の脳裏を掠めた。