紳士な副社長からの求愛〜初心な彼女が花開く時〜【6/13番外編追加】
「おい、何でそこで黙るよ?」
「……喜んで、もらえるでしょうか」
「あんだけ想われといて、不安になる要素がどこにあんの。……ったく、しょうがねぇな。お兄さんが聞いてやるから、話してみ?」
いつもなら、「誰がお兄さんですか」とか突っ込むところだけど。
今はそんな気力もなく、ぶっきらぼうなのに優しいその声音に私が顔を上げれば、
「ははっ、さっきよりすっげぇ複雑なカオしてんじゃん」
ぷに、とほっぺを摘まれた。
「……しゃやこしゃんが、」
「あ?」
でも私がそのまま話し出すから、比呂さんは摘んでいたほっぺをパッと離す。
「彩也子さんがさっき、もう一度頑張っちゃおうかなって……」
「ああ、あれのせいか……」
比呂さんが苦く笑う。
「………私、彩也子さんは前に和泉さんに、人を好きになる気持ちを、教えてくれた人なんじゃないかと思うんです」
「……どういうこと?」
怪訝な表情をする比呂さんを前に、私は思い出していた。