紳士な副社長からの求愛〜初心な彼女が花開く時〜【6/13番外編追加】
そして実は今日も、もともとこの時間で予約を入れていて。

だけど昨日AKPを思い立った珠理ちゃんは、あの後すぐに麻美さんに連絡をして自分の代わりに私をやってあげて欲しいと頼んでくれていたそうだ。

本当に、彼女は一体昨日からどれだけのことを考えて今日動いてくれていたんだろう。

もう、珠理ちゃんには頭が上がらないなぁ……。


そして同時刻に2組受け入れることの出来るこのお店には、本来なら私たちの他にもう1組お客様がいるはずだったのだけどーーー。


「しかも珠理ってば、昔っから要領と運だけは良いのよねぇ。まさか今日(たまき)ちゃんがお熱で来れなくなっちゃうとは。ね、竜」

「ああ。…あ、環ってのはオレの昔馴染みの夫婦の、もうすぐ5歳になる娘のことなんだけど」


坂崎さんが補足してくれる。


「竜のことが大好きなオマセちゃんで、昨年からヘアカットする時はいつもここへ来てるのよね!そう言えば環ちゃん、具合は大丈夫なの?」

「熱はあるけど本人はケロッとしてるって。だからなおさら"竜ちゃんとこに行く!"って駄々こねてたらしくてさ。テレビ電話で、"ちゃんと風邪直したら、今度環の好きなケーキ持って特別に家まで髪切りに行ってやる"って約束したら、途端にニコニコご機嫌で"いちごのケーキとくまさんのケーキとプリンのケーキ"ってリクエストされたわ」

「ふふ、かーわいいわねぇ」

「(か、可愛い……)」


その話を聞いて、つい私の頬も緩んでしまった。



ーーとまぁそういう訳で、その可愛らしい小さなお客様が急遽来られなくなってしまったために、今日のこの時間は珠理ちゃんと私の貸切のような状態となったのだった。

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