紳士な副社長からの求愛〜初心な彼女が花開く時〜【6/13番外編追加】
本来、美容院というのは私の最も苦手とする場所。
何となく居心地が悪いし、やってもらっている間、スタイリストさんから不意に飛んでくる世間話に臨機応変に対応しなきゃいけないのもなかなかの体力と精神力を使うから苦手。
だから美容院に行く頻度も半年に1回程と、世の女子たちに比べたらかなり少ない方だと思う。
前髪は、伸びたら自分で適当に切っていた。
だけどお菓子をいただきながら1対1ではなく5人で他愛のない会話をする和気藹々としたこの空間は、例えるなら学生時代の休み時間とか放課後の教室みたいな空気感があって。
最初こそ緊張していた私だけれど、いつの間にかすっかり楽しい時間を過ごさせてもらっていた。
しかも、私がこれからメイクの仕方を勉強したいとポロッとこぼしたら何と麻美さんが合間に少しレクチャーしてくれたりして、それはもうとても有意義な時間だった。
珠理ちゃんは「私の出番がなくなる……!」とちょっとむくれていたけれど。
「さ、完成よ。灯ちゃん、メガネを掛けて見てみて?」
そして2時間程が経った頃、ふふ、と微笑んだ麻美さんにケープを脱がされ、促されるままメガネを掛ければぼんやりとしていた視界が一気にクリアになる。
そして鏡に映る自分に息を飲んだ。
ーー今日はもう、驚きの連続だーー。