紳士な副社長からの求愛〜初心な彼女が花開く時〜【6/13番外編追加】
どんな髪型にしたいか、特に希望のなかった私は全て麻美さんにお任せをしていたのだけど。
綺麗な黒髪は生かしましょう、ということで髪色はそのままに、胸の辺りまであったストレートの髪は5センチ程切られ。
全体的に軽くしてもらった後毛先の方に掛けられたニュアンスパーマが、思わずズイっと鏡の方に身を乗り出した私の肩下でふわりと踊った。
少し長めの前髪は横に流されていて、大人っぽい。
「……あ、灯さん、めっっっ、ちゃ可愛いです……‼︎麻ちゃんもう天才……っ!」
「ふふっ」
隣から珠理ちゃんが恍惚とした表情で見つめて来るけれど、鏡の中の自分に呆気に取られている私は上手く反応出来ない。
「おー、良い感じじゃん」
「うんうん、すっげぇ可愛いっすね!」
悟さんがニコニコしながら、麻美さんの横からずいっと身を乗り出して来た。
「……んー。何か悟の今の"可愛い"はキモかった」
「キモっ……⁉︎ちょっ、竜さん何すかそれ⁉︎オレ褒めただけなのに⁉︎」
「うん、褒めただけなのに」
「うわっ、ひでぇ!」
だけど坂崎さんと悟さんのそんな風にふざけ合う声も、あはは!と4人が盛り上がる声も、今は私の耳を素通りして行く。
「え、え、深町さん、今の"可愛い"は深町さん的にアウトっすか⁉︎」
「…………。」
「ほら、アウトだって」
「えー!深町さーん⁉︎」
「…………。」
「灯さん?」
「灯ちゃん?」
鏡に見入ったまま、うんともすんとも言わない私の異変に気づいた珠理ちゃんと麻美さんに呼び掛けられて、ようやく放心状態の私から飛び出した第一声。