紳士な副社長からの求愛〜初心な彼女が花開く時〜【6/13番外編追加】
「……こ、ここにも魔法使いが……」
それに、私以外のみんなが吹き出した。
いや、だって普段と違うメイクも相まって、それくらい鏡に映る自分が自分じゃないみたいで……。
「もうっ。灯さんにかかれば、みんな魔法使いになっちゃいますね?」
「あらやだ灯ちゃん、私はただちょーっと灯ちゃんの魅力を引き出しただけよ?」
可笑しそうに笑う珠理ちゃんと、悪戯っぽく微笑み、人差し指と親指で"ちょっと"を表現しながらさっきの高木さんと同じようなことを言ってくれる麻美さん。
「そうそう。だからこの姿は、深町さんの魅力をそのまま表現してると思って?」
鏡越しに私を見つめ、柔らかく目元を解す坂崎さんに、うんうんと頷く悟さん。
「ふふ、灯さん。どうですか?魔法をかけられた気分は?」
珠理ちゃんも、くりくりの瞳を柔らかく細めて横から覗き込んで来る。
ーー私に自信をつけさせるために今日の日をいろいろと計画してくれた珠理ちゃん。
私に目に見える変化をもたらしてくれて、それはただ私自身の魅力を引き出しただけなのだと、当たり前のように言ってくれた高木さんや麻美さんや坂崎さん。
……ああ、どうしよう。
みんなの優しさがじんわりと心に染み込んで来る。
同時に目頭が熱くなる気配を感じた私は慌ててそこに力を込めた。
「……うん。かけてもらって良かった……」
そしてふにゃ、と泣き笑いみたいな表情でそう答えた私を見て、珠理ちゃんはくしゃりと嬉しそうに破顔した。