紳士な副社長からの求愛〜初心な彼女が花開く時〜【6/13番外編追加】

家の最寄駅の改札を出た時、手に握りしめたままだったスマホがブルっと震えた。

返事が返って来たかなとスマホを見れば、何とそれは和泉さんからの着信だった。

わわ……!ま、まさか電話が掛かってくるとは思わなかった……!

突然のことに急激に忙しなく暴れ出した心臓。

それを何度か深呼吸を繰り返すことで何とかなだめつつ、通話ボタンをタップした。


「もっ、もしもしっ」 


話しながら歩き出す。


『もしもし灯ちゃん?今電話、大丈夫かな?』

「はっ、はいっ、大丈夫ですっ」


和泉さんの低音で紡がれた自分の名前に余計に胸がドキドキして、ちょっと声が裏返ってしまった。


『良かった。灯ちゃんから誘ってくれたのが嬉しくて、メッセージ見た瞬間思わず電話しちゃった』

「………っ!」


その声色から、本当に嬉しそうに顔を綻ばせている和泉さんの顔が浮かんで、心臓がまるで鷲掴みされたようにドクンと大きく高鳴った。


「……わ、私だって、お誘いすることもあります、よ……⁉︎」


その動揺を隠すように無意識に声が少し大きくなってしまい、ちょうど前から歩いて来たサラリーマンからの視線をちらりと感じて思わず首をすくめる。


『あはは。うん、誘ってくれてありがとう。実はね、明日の午後の便で帰ることになったんだ。ご飯に行く時間は取れそうにないんだけど、明日の夜、灯ちゃんが空いていたらちょっとだけでも会えないかなと思って。お土産も渡したいしね』


あ、明日……⁉︎
  
早くても会えるのは週末くらいかなぁ、なんて勝手に思っていたから、さすがにそれはまだ心の準備が……!
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