紳士な副社長からの求愛〜初心な彼女が花開く時〜【6/13番外編追加】
お土産を頂き終わってしまった今、この状況では間違いなく和泉さんはこのまま帰ってしまうだろう。

じゃあ今ここで伝える?

いや、でも運転席には瀬戸さんがいて、後部座席のドアは開いたまま。

……非常に切り出しづらい状況である。


ならば残る方法はただ1つ……!


「和泉さん、まだ少しお時間ありますか……⁉︎せっかくここまで来て頂いたので、お礼に良かったらお茶、1杯だけでも飲んで行きませんか⁉︎」


苦肉の策でそう提案すれば、途端に和泉さんが微笑を崩して困り顔になってしまった。


「……灯ちゃん、それ、意味分かって言ってる……?」

「え……?」


意味、とは……?意味も何も、そのままの意味なんだけれど……。


「……いや。あー、ごめん、ありがとう。灯ちゃんが純粋に僕を労ってくれようとしてそう言ってくれてるのは分かってるしとても嬉しい。でもね灯ちゃん。男をそんな風に簡単に自分の部屋に誘っちゃダメだよ?」

「えっ⁉︎」


和泉さんがガシガシと襟足を掻く。その仕草は、普段の和泉さんからはあまり想像出来ない仕草だった。


「世の中には下心のある男で溢れているからね。その誘いは純粋な意味に捉えられないことの方が多い。それに僕だって男だ。しかも灯ちゃんに好意を寄せている。当然下心だって持ち合わせているし、あわよくば、なんて考えないこともない。だから、お願いだからそんなに無防備にならないで?」


……そっ、そういうことか……!

お茶して行きませんかっていうのはつまり、そういう意味に捉えられてしまうってこと⁉︎

私ってば、なんてことを……!

和泉さんに説明されて、ようやく自分の浅はかさに気が付いた。
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