紳士な副社長からの求愛〜初心な彼女が花開く時〜【6/13番外編追加】
「ご、ごめんなさい……」
しゅん、と謝れば、眉を下げたままの和泉さんが頭をポンポンと撫でてくれた。
「いや、僕の方こそごめん。でも約束して、灯ちゃん。これからは簡単に男を部屋に誘わないこと」
「はい……」
「ん、いい子だ。今度は灯ちゃんが僕のこと、ちゃんと好きになってくれた時にまた誘って?なんてね」
そう言って悪戯っぽく笑う。
ちゃんと、好きになってくれた時に……。
「あっ、あのっ……!」
これは、和泉さんの方から思いがけないナイスパスが飛んで来た。
今が、気持ちを伝える絶好のチャンスじゃないだろうか。
そう思い、勇気を出して口を開けば、
「副社長。社長から、道草食ってないで早く報告しに来いと催促の連絡が来てしまいましたが」
そのタイミングで瀬戸さんがスマホを片手に運転席から降りて来た。
「……ああ、全く人使いの荒い社長だ。これから向かうと言っておいてくれ」
「承知致しました」
眉根を寄せた和泉さんの指示に頷いた瀬戸さんは再び運転席へと戻って行ったけれど、さっきまでの流れは完全にぶった切られてしまった。
そして1度挫かれ萎んでしまった勇気はそう簡単にすぐには奮い立たせられない。
「灯ちゃん、さっき、何か言いかけた?」
「あ……の……、えっと……っ、」
「うん」
「あの……っ、」
「ん?」
「…………いっ、いえ!お仕事忙しいのにわざわざ寄って頂いてありがとうございました!」
……ああ……。
結局私はなかなか言い出すことが出来ず、忙しい和泉さんのことをこれ以上引き留めておける訳もなく、情けないことにそう言うことしか出来なかったのだった。