紳士な副社長からの求愛〜初心な彼女が花開く時〜【6/13番外編追加】
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それから5日が経った金曜日。
和泉さんはやっぱり忙しいようで、水曜日もふじさわ食堂には来られず、今週はまだ一度も会えていない。
彩也子さんとうっかり顔を合わせたら気まずいから、あれからRokuにも顔は出していない。
月曜日には珠理ちゃんに和泉さんに気持ちを伝えられなかったことを報告して、「いろいろと協力してもらったのにごめん」と謝罪した。
てっきり「もう!」と怒られてしまうかと思ったけれど、私があまりに落ち込んでいたからか、「灯さんはちゃんと気持ちを伝えようと頑張ったんでしょう?なら謝らなくていいです!次です、次!」と逆に励まされてしまった。
でもそれからその次の機会というのがなかなかやって来ず、私は少し焦っている。
落ち着いたら連絡すると言われている手前、こちらから連絡するのも気が引けるし……。
「はぁぁぁぁ……」
「はは、深町さん、今すごい深いため息ついたね?良かったらこれ、あげる」
「…えっ⁉︎」
自分のデスクで、私は無意識に深いため息をついてしまっていたらしい。
ちょうど通りかかった加藤先輩が、苦笑しながら私のデスクにトン、とミルクプリンを乗せてくれた。
「あっ、ありがとう、ございます……」
「どういたしまして。ところで深町さん、今週仕事詰め込み過ぎじゃない?営業としては助かるけど、ほどほどにして、無理しないでね?」
「…はい。でもこれくらい、全然大丈夫です」
そうなのだ、今週の私は、和泉さんに会えない寂しさと気持ちを伝えられていない焦りを紛らわせるように仕事を詰め込んで没頭していた。
でも、このため息は断じて仕事のせいではない。
なのにまた加藤先輩には優しいお気遣いを頂いてしまって、大変申し訳ない。