紳士な副社長からの求愛〜初心な彼女が花開く時〜【6/13番外編追加】
「深町さん、本当に美味そうに食べるね」
その柔らかい声に、ハッと我に返る。
いつの間にか、向かいの席の加藤先輩が優しく目を細めてこちらを見つめていた。
「とっ、とっても美味しいので!加藤先輩、こんな素敵なお店教えて下さってありがとうございます!」
「はは。お礼を言うのはこっちの方だよ、深町さん。今日はお供してくれてありがとう」
慌ててそう取り繕えば、先輩が可笑しそうに笑った。
「いえいえ、全然!でも確かにこれは男の人1人では入りづらい雰囲気ですよね」
というか、キラキラし過ぎて正直私も入るのを躊躇ったくらいだ。
「でしょ?今度はデザート系のパンケーキも食べに来てみたいけど、やっぱり1人ではさすがになぁ」
「先輩なら誘ったら一緒に行ってくれる女子、多いと思いますよ?というか、彼女さんはいらっしゃらないんですか?ってあれ、これセクハラですかね」
「はは。いや、全然大丈夫。うん、残念ながらいないねぇ。それに、一緒に行ってくれれば誰でも良いって訳じゃないから」
加藤先輩はメガネの映えるすっきりと整った顔立ちで、誰にでも分け隔てなく接することが出来る人で。
その上仕事もサラリとそつなくスマートにこなしてしまうから、女子社員からの人気も高い、らしい。(珠理ちゃん談)
それに加えて実はずっとここのパンケーキが食べてみたかっただなんて、そんな可愛いギャップまで持ち合わせていた先輩に彼女がいないというのは正直意外だった。
「…そういう深町さんは、今、彼氏いる?」
「……彼氏……」
だけど今度は逆にそう問い返されてしまい、私は言葉に詰まる。
「って、ごめん、オレが聞くと何か逆にセクハラみあるな」
私の一瞬の躊躇いを読み取ったらしい加藤先輩が眉を下げる。
「あっ、いえっセクハラみないです、全然問題ないです!」
私が躊躇ってしまった理由はそこじゃない。
だから急いでフォローするも、何と答えるべきか逡巡してしまう。