紳士な副社長からの求愛〜初心な彼女が花開く時〜【6/13番外編追加】
午後の仕事をこなしつつ、15時の小休憩にと加藤先輩からいただいたミルクプリンを休憩スペースで食べながら、私は悩んでいた。
今日の夜、樹くんと飲みに行くかどうか、を。
あまりにも唐突だったし、行くとも行かないとも答える前に樹くんが行ってしまったから、ちゃんと返事が出来ていない。連絡先も知らない。
"深町、約束、ね?"
でもあの一言には、真剣な眼差しには、断るのを躊躇ってしまう雰囲気があった。
もしかしたら、私が当時樹くんを避けてしまったことによって、樹くんの中にも少なからず中途半端にわだかまりを残してしまっていたのだろうか。
……なんて、それはさすがに自意識過剰でおこがまし過ぎるな。
樹くんにとったら私なんてただの中学の時のいちクラスメイトに過ぎなくて、あんな出来事も、取るに足りないことだっただろうから。
覚えていてくれたのが不思議なくらいだ。
それでも何かもの言いたげに私を見ていた中学時代の樹くんを思い出していれば、ポケットに入れていたスマホがブルっと震えた。
"灯ちゃん、お疲れ様。なかなか連絡出来なくてごめんね。ようやく仕事が片付いたのでご飯のお誘いです。急だけど、今晩は空いているかな?"
ポケットから取り出して見てみると、それは和泉さんからのメッセージだった。
う、嬉しい……!和泉さんから久しぶりの連絡だ……!
思わず両手で持ったスマホを上に掲げてしまった。
……だけど、今日の夜は樹くんが……。