紳士な副社長からの求愛〜初心な彼女が花開く時〜【6/13番外編追加】
一瞬、樹くんの方を断って和泉さんの方へ行こうとも思った。連絡手段はないから、エントランスまで迎えに来てくれた樹くんに直接断りをいれて。
でも、確実な約束をした訳じゃないとはいえ、先約は樹くんだ。
それに、ふと思う。和泉さんに告白する前のこのタイミングで樹くんと再会したことには、何か意味があるんじゃないかと。
あの頃のことを、あの頃言えなかった気持ちを含めて樹くんと話すことが出来たなら、そうして完全に昇華させることが出来たなら、私はもっと、自信を持って和泉さんに向き合えるんじゃないか、そう思った。
"お疲れ様です。せっかく誘って頂いたのにすみません、残念ながら今日は先約があって……。その代わり、明日は週末ですがお会い出来ますか?その時に、和泉さんにお話したいことがあります"
だから、私は和泉さんにそう返信をした。
今日はちゃんと樹くんと話をして、明日こそ和泉さんに告白しようと。
でもその後、すぐに来ると思っていた和泉さんからの返信はしばらく待ってみても来ず。
仕事の合間に連絡してくれたんだろうから、また忙しくなっちゃったんだろう。そう結論づけた私は自主休憩を終え、スマホをポケットにしまって自分のデスクに戻った。
だけど再びパソコンに向かいながらも、意識はずっとポケットにあって。
"そっか、今日は金曜日だしね。突然ごめんね。僕のことは気にせず、楽しんでおいで。でもあまり飲み過ぎないようにね。帰りも気をつけるんだよ?明日は11時に灯ちゃんの家の前まで迎えに行きます。"
そんな過保護過ぎる和泉さんからの返信が来たのは、終業時刻も間近になってからのことだった。