紳士な副社長からの求愛〜初心な彼女が花開く時〜【6/13番外編追加】
頬杖をつき、くすりと笑って小首を傾げながらそう問われてしまえば、
「……う……。分かりました……、私なんかで、良ければ……」
ごちゃごちゃ考えていた私も、これには思わずこくりと頷いてしまっていた。イケオジの"可愛い"は、罪過ぎる。
「良かった。ありがとう」
私の答えに、本当に嬉しそうにふわりと顔を綻ばせた彼に戸惑う。
この人、何か調子狂うわ……。
「あ、自己紹介がまだだったね。僕は和泉 恭加(イズミ キョウカ)と言います。"いずみ"は頭に和むが付く方、"きょうか"は恭しいに加えると書きます」
ご丁寧に漢字の解説までしてくれる。
「深町 灯(フカマチ アカリ)です。"ふかまち"はそのまま深い町に、"あかり"は灯台の"灯"の字一字で"あかり"です」
だから私も漢字の解説付きの自己紹介にしたのだけど。
「"灯"ちゃんか。うん、イメージにぴったりだ」
……自慢じゃないが、昔から地味でどちらかというと根暗だった私は、名前負けしていると言われたことはあれどぴったりだなんて言われたことは一度もない。
だからともすれば一見嫌味かとも勘ぐってしまいそうになるセリフなのに、そう言い切ったこの人の屈託のない笑顔を眺めていると、一切の他意を感じない。感じないけれど、まだ会うのは2回目だと言うのに何をもってぴったりだと思うのかは甚だ疑問だ。
ーー普段だったら私の生活圏では絶対に出会うはずも関わるはずもないタイプの人。
だけど、この日から私とイケオジ改め和泉さんは、毎週水曜日、ふじさわ食堂で昼食を共にする何とも不思議な関係になったのだった。