紳士な副社長からの求愛〜初心な彼女が花開く時〜【6/13番外編追加】
実は珠理ちゃんにはいつだったか水曜日にランチに誘われた時、
"毎週水曜は予定が入ってるから、一緒に行けない"
そう告げた所案の定すごく食いつかれてしまって、渋々和泉さんのことを話していた。
"まさかあのむさ苦しいおっちゃんばかりの大衆食堂に、イケオジとの出会いが落ちていたなんて……!"
するとやや失礼なことを抜かしながら目をキラキラさせた珠理ちゃんが、"イケオジとランチするなら少しはオシャレして行きましょう⁉︎灯さんは本当化粧っ気がなさ過ぎるんですから!"と、それから水曜日を迎える度にこうやって私の顔にメイクを施そうと迫ってくるのだ。
ランチするだけなのにわざわざオシャレして行く意味が全く分からない私は、それをのらりくらりと躱していたから今日はせめてリップだけでも!と彼女は妥協したらしい。
その時、パコン!と小気味の良い音が響いた。
「なに、中村はまた深町さん困らせてんの?」
「いてっ!出たな、佐原!違うもん、私は灯さんのために……っ」
頭をさすりながら後ろの佐原くんを振り返り睨む珠理ちゃん。
さっきの音は、いつの間にか外回りから戻ってきていたらしい佐原くんが、クリアファイルを丸めたもので珠理ちゃんの頭を後ろから叩いた音。