紳士な副社長からの求愛〜初心な彼女が花開く時〜【6/13番外編追加】

「……お、お話し、ですか……?」


突然のことに、私は恐々問い返す。

この急な展開に、もうさっきからずっとバクバクと忙しなく鳴っている心臓の音にさらに拍車が掛かって、エンジンも止まり一気に静かになった車内では今にも漏れ聞こえてしまいそうだ。


一体何の話だろう……?


瀬戸さんとお会いするのは今日で2度目。

ここまでの様子から、まさかお付き合いを反対される、とかではないと思うけれど……。

でもそんな私の心中は、しっかり顔に出ていたらしい。


「ふ、そんなに身構えないで下さい。ただ、あなたにお礼が言いたかったんです」

「お礼……?」


予想外の言葉に、思わずキョトンとする。


「はい。深町さんと毎週水曜日にランチをする時間を確保するために、副社長の放浪癖がピタリと止み、秘書としては大変助かりましたので」

「え、そうだったんですか……?」


しょっちゅうフラッと息抜きに出掛けては瀬戸さんに怒られてるって言ってた和泉さんが、私とランチをするために……?


「ええ。放浪するよりも、あなたに会うことの方がよっぽど良い息抜きになっていたのでしょうね」


そこで瀬戸さんが苦笑を漏らした。


「それに香港での出張の時。あなたに電話をした日は急なトラブル対応に追われ、何とか収集をつけたところからの会食でしたのでさすがの副社長もお疲れで。でもあなたとの電話が彼に癒しとやる気を与えて、結果、予定よりも少しだけ早く帰国することが出来ました。あなたの存在は、もうずっと前から副社長にとってのエネルギー源なんです。なので本当に感謝しています」

「そ、そんな、滅相もない……!」


恐れ多いその言葉たちに、私はふるふると首を横に振る。

でも、和泉さんにとって私がずっとそんな存在になれていたんだとしたら、こんなに嬉しいことはない。

いつも貰うばっかりで、何ひとつ返せていないと思っていたから。

瀬戸さんの思い掛けないお礼に、心がじわじわと温かくなっていくのを感じた。


「……とまぁ、秘書としてのお礼はこれくらいにして。今度は恭加のいち友人としてのお礼を述べさせてもらいましょうか」

「ええ⁉︎」


ところが、次に発せられたそのセリフに私は喫驚する。

もうこれだけで十分身に余るお礼を頂いてしまったと思っていたのに、まだあるの⁉︎

しかも友人としてって……⁉︎

でも驚く私をやはりフロントミラー越しにチラリと見やって目元を和らげた瀬戸さんは、メガネのブリッジを右人差し指の第一関節でクイ、と上げてからそのまま続けた。

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