紳士な副社長からの求愛〜初心な彼女が花開く時〜【6/13番外編追加】

「灯さん……!」

「ったく……。深町さんはコイツに甘過ぎですよ」

「うるさーい!佐原は黙って今すぐここを去れ!」


ムキーっ!と逆毛を立てた猫のように威嚇した珠理ちゃんに、「おー、怖」と大して怖くもなさそうな声色で呟いて、佐原くんは自分のデスクへと戻って行った。


「これ、"spRING"の春限定色で思わず2色買いしちゃったんです!ここのメーカー、大好きで。でもイエベの私にはこのライラックは似合わないの分かってるから一度も使ってなくて。灯さんはブルベっぽいから、似合うと思うんですよねぇ」


その後ろ姿を睨んでいた珠理ちゃんがくるっと私の方へ向き直って、気を取り直したように言う。

え?イエベ?ブルベ?なっ、何それ……?

ブルーベリーの略?じゃあイエベは何……?

私は珠理ちゃんの言葉の半分も理解できないまま、キャップの開いたリップの色を見て驚く。


「ねっ、ねぇ、待って⁉︎そんな紫のやつ塗るの⁉︎」


私がいかにもな紫に引いていると、


「ああ、大丈夫です!これ単体で見るとすごい紫ですけど、唇に乗せると綺麗なパープルピンクに発色しますから!じゃあ失礼しますね」

そう言った珠理ちゃんにされるがまま、リップを塗られる。
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