紳士な副社長からの求愛〜初心な彼女が花開く時〜【6/13番外編追加】
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翌日土曜日は昨日の雨が嘘のような晴天で、真っ青な空には入道雲がぽっかりと浮かんでいた。
そんな中、私は今、和泉さんの運転する車に乗っている。時刻はお昼を少し回った頃。
「身体、大丈夫?」
「……平気、です」
「……なら良かった。昨日から手加減出来なくてごめんね。でも《《今朝のアレ》》は、灯ちゃんが煽るのが悪い……」
そのセリフにかぁっ、と顔が赤くなる。
「あ、煽ったつもりでは……!」
「うん、灯ちゃんは無自覚天然娘だからね。そこがオジサンはもう余計に、ね……」
慌てて否定すれば、和泉さんは前を見たまま片手で口元を覆う。心なしか、耳が少し赤い。
「……自覚、はないですが、オジサンを煽るとあとが大変っていう意味は、理解、した気がします……」
普通一晩に何回するものなのかは知らないけれど、一度で終わらなかった行為に昨日はグズグズに溶かされて、いつの間にか意識がぷっつり途絶えて次に目を覚ました時にはもう朝だった。
身体を起こそうとして身動きが取れないことに気づき、背中から和泉さんに抱きしめられている状況を理解して、回らない頭で昨日の記憶を手繰り寄せ1人赤面した。
僅かに日が差し込む早朝特有の静けさの中、ドッドッドッ、という自分の駆け足の激しい鼓動と、和泉さんから聞こえるトク、トク、トクという規則正しい穏やかな鼓動が絶妙なハーモニーを奏でていて、密着した肌触りから、2人ともまだ一糸纏わぬ姿であろうことを認識してさらに赤面して。
だけどこうして和泉さんと心も身体も通じ合えたことがとても嬉しくて、モゾモゾと体勢を変えて向かい合い、和泉さんがまだ寝ているのをいいことにすり、とその胸に擦り寄って幸せを噛み締めた、ところまでは良かったのだけど。
「……灯ちゃん……。朝からそれはちょっと、可愛すぎてヤバイ、かも……」
和泉さんが目を覚まし、私を抱き締める力を強めてそう呟くから、
(ヤバイ、とは……?)
その意味を込めて見上げたのも良くなかったのか。
太もものあたりに当たる硬い感触で、聞くまでもなくその意味を察してしまった。